2006年05月23日

2005/01/31〜01

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投稿者:木村哲也2005/1/31 17:17
◇新資料

 鶴彬研究会『評伝 反戦川柳人・鶴彬』は、著作権の関係で、半分ほどのコピーしか読めずにいるが、たいまつ社版でのような、「句集の脚注」でなく、普通の文章である。ただし、あらためて強い印象は持たなかった。
 さて、石川近代文学館『近代川柳』に、鶴彬の句が載っていることを確認した。
 それから、和川柳社から岡田一と『鶴彬句集』が出ているが、目下は目次等のみで、本文は再度コピーを請求中である。これも、全部は入手不可であろうが。

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投稿者:木村哲也2005/1/30 3:49
◇木村半文銭「プロ川柳の思想性と芸術性」

 昭和11年12月。「鶴彬君に答ふ」という副題がある。
 昨日ふれた論に対して、森田一二と鶴彬が反論したことを喜んでいる。
 鶴彬を刺激したことに恐縮しながら、やはりまた書く、という。なぜなら半文銭が正しいからだと。
 森田は、プロレタリアにこだわれば、川柳にこだわらず、他の表現形態もよしとする、という。
 近作4編も引かれている。例えば「売春婦あぶれた夜は飢えと寝る」である。レベルが低いとされている。
 対象の価値と方法の価値との見解があいまいと言う中で、ここおろしが続いていく。

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投稿者:木村哲也2005/1/29 9:45
◇木村半文銭「川柳の大衆性に就て」

 昭和10年11月。
 「鶴彬君の説く大衆性について高見を仰ぐ」ということだが、直接は説いたものを読んでいない、と言いつつ、想像で反論が始まる。
 芸術性より思想の伝達が優先する、と、森田一二も含めて言われている。ならば、形式は何でもいいはず、とも。
 しかし、半文銭に言わせれば、大衆は愚衆であるから、まっぴらごめんだと。賛同者を得るために、呼びかけられるのも、迷惑かと。
 また、半芸術行動であると。

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投稿者:木村哲也2005/1/28 10:17
◇古屋雪村「新興柳壇第二期運動」

 大正15年12月。「喜多一二君に贈る」とある。
 一度は放置した、鶴彬の本名での評論に、二度めにはやはり反論をする、というものである。
 鶴彬による古屋の句の批評を、古屋は「表現の方向、句の思想象徴帯を知らない理智一点張りの批評」と、鶴彬の姿勢をやり返している。
 鶴彬の科学的合理詩境を認めつつ、宗教の重要性についても、やんわりながら反論している。
 創作が「鋭い」、というのはどういうことか、と最後に問題提起をしている。

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投稿者:木村哲也2005/1/27 0:29
◇入隊前で

 約3分の2の句。
 昭和9年から死亡までで、約3分の1ということになる。

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投稿者:木村哲也2005/1/26 7:01
◇『影像句集』古屋雪村編

 生前に本人編の句集を持たない鶴彬だが、唯一と言っていいか、昭和2年3月に、表題のような句集がある。26句収録。
 しかし、これまた(?)正しく句が引かれていない。
 上が鶴彬自身の発表形態、下が「影像句集」収録形態。

 芽の双葉まろき虚空を抱き上げる
 芽の双葉まろき虚空を抱き上ぐる

 流星のあとを拭へる時の手よ
 流星のあとへ拭へる時の手よ

 陽は己(おの)が錯覚の夜を追ひ続け
 陽はおのが錯覚の夜追ひ続け
 
 剃刀の刃の冷たさの上に躍れ
 剃刀の刃の冷たさの上に踊れ

 空を射む矢壺空しく成り果てし
 空は射む矢壺空しくなり果てし

 秋の海、ひとりの男――海の精か
 秋の海――一人の男――海の精か

 月、雲に失せしと人の小主観
 月雲に失せしと人の小主観 

 尺蠖(しゃくとり)のあゆみは時をさしはかる
 尺蠖のあゆみは時をさしはかり 

 眼を閉ぢて月の歩める音を聞く
 眼を閉ぢて月のあゆめる音を聞く

 宿命の軌道を汽車は煙を吐きつ
 宿命の軌道を汽車は煙吐きつ

 星空へ基督の眼と望遠鏡
 星空へキリストの眼と望遠鏡
 
 さて、以下の句は、他では見当たらない。ここに限っては妙。

 地は噛まん夜の海海の白き歯よ

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稿者:木村哲也2005/1/25 9:55
◇「『影像』の宣言書」古屋雪村

 昭和4年2月。「鶴彬君に贈る一片」と副題があり、九つの小見出しがある(以降、旧字体は断わりなく新字体にすることがあることを了解されたい)。
 「プロレタリア川柳論」では、鶴彬から送られた「決闘書」への反論を述べているが、むしろ「プロレタリア川柳なら俺のにまさるものはない」という趣旨では、との切り返しである。
 「新興川柳の生命」では、やはり鶴彬から送られた「走り書き的解決」を引用し、唯物史観によって芸術的発生条件が必ず政治的闘争の役割には発展しない、と反論している。
 「対民衆への問題」では、民衆に盛んに働きかけても、芸術の本質には寄与しないし、騒がしいのは鶴彬自身なのに、他人を騒がしい、と言っている、と述べられている。
 「芸術観と社会観」では、鶴彬の引用をしながら、社会観と芸術観を一緒くたにするのは暴挙である、と切り返している。
 「無産階級文芸とは」「文芸運動の骨子」「道歌は芸術にあらず」では、鶴彬は登場しない。
 「詩を作るより田を作れ」では、表題のように鶴彬に呼びかけ、社会活動のほうが有効、と言われている。
 「画期的作品の出現」では、鶴彬に画期的作品の出現が期待されている。「灼熱の群集鉄の門を破る」を筆頭に、九句ほど鶴彬が引かれるが、まだ甘い、と。
 最後に、決闘を申し込まれたから、やんわり反論したが、もっと言いたかったこともあるし、また、虚も突いてくれ、ともある。
 なお、古屋はその後消息不明で、そのことは果たされなかった。

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投稿者:木村哲也2005/1/24 14:52
◇「定型律批判の立脚点」中島國夫

 「鶴彬氏の時評を読みて」の副題がある。
 昭和10年3月。
 『川柳人』268号に載った、鶴彬の定型律批判を扱ったものである。
 定型を捨てた者もいれば、そうでない者もいる、自由律が飛躍しすぎたから、定型律に戻る立場はあってもよく、というような趣旨で進む。
 「定型の虐使」という鶴彬の言葉も、ややいさめられている。
 自由律作家は、定型に依存する定型作家を越えた、定型作を作れて本物、という最後あたりの趣旨は、身につまされた(?)。

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投稿者:木村哲也2005/1/23 13:09
◇川上日車「表現と闘争と思想」

 昭和11年11月。
 新興派でありながら、田中五呂八と鶴彬ははっきり違い、以下の句は川上は選ばないが、鶴彬は選ぶだろう、としている。

 許されし空気は煙と鉄ほこり
 勤続が迷惑でありクビを切り
 黒髪をむしりとらうといふベルト
 嫁入りの晴衣こさへて吐く血へど。

 最後の句だけ、鶴彬のものである。

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投稿者:木村哲也2005/1/22 18:20
◇ 中島國夫「年頭所感 弦を張り了へて」

 昭和9年12月。
 最後に、「方向に就いて」と、短い章があり、「
鶴彬は鶴彬の信條に立つ」とあるのみ。

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投稿者:木村哲也2005/1/21 8:41
◇「新生命主義への出發――既成的な新興川柳の清算と各詩派の検討」

 昨日の評論では、鶴彬の「失はれたる寫實主義の揚棄」への批判もなされていた。
 さて、昭和12年1月の上記の評論では、鶴彬が五呂八を、観念的な思索や感情を主題とした哲学的カクテルに酔ったものだと諷しながらも、対立的立場も新興川柳と認めている、とまずはある。
 しばらくして、鶴彬らは、「詩」を否定しきれず、現場主義の壁を衝いている、と批判されている。

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投稿者:木村哲也2005/1/20 8:27
◇「詩は實践にあらず――川柳マルキシズムの三大欠陥」田中五呂八

 昭和5年1月。
 発禁程度の安全地帯からの、中途半端な煽動なら川柳でなくてもできる、という流れの中で、鶴彬が4句引かれる。

 壽命だと云って手當をくれぬなり
 搾取機の煙もくもくと怒るやう
 資本家の組合法に畏まり
 ゼネストのレポ機械もサボリ出し

 順に、「なまぬるい」「むしろユーモア」「降服」「わからない」と酷評し、「萬國の労働者! それ結束せよ!」のほうがまし、と言われている。

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投稿者:木村哲也2005/1/19 15:20
◇『熱い汗』岩佐ダン吉

 あかつき川柳会の事務局の方の、川柳と散文。
 鶴彬の出てくる句を挙げよう。
 
 大阪城を訪ねて
 鶴彬に思うことありペンを取る
 ひと筋の光明じっと見た彬
 鶴彬いま慟哭の前に立つ
 鶴彬の無念を聞いた獄舎跡
 暁を信じ彬のペン不屈

 金沢の句碑を訪ねて
 九条を殺す彬を二度までも
 句碑を前に日本海は荒れている
 手と足の句碑よ彬は眠れない
 暁の碑こぼれる萩の中にある
 拳固く彬の声に耳澄ます

 朝日新聞02年8月15日「鶴彬の川柳をかみしめよう」、スポーツおおさか02年6月10日「鶴彬と大阪城」の二つの文章も収録。

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投稿者:木村哲也2005/1/18 19:39
◇鶴彬が出てくる評論

 月末ごろに新資料が揃うまで、しばらく『新興川柳選集』から、表題について扱う。
 田中五呂八の「机上論から實際論へ――新興川柳の詩的漂白(一)」昭和4年4月、を見る。
 山村浩の後に、バット買ふ金を救援袋に入れる、など5句が引かれる。プロレタリアート的という、この句以外は酷評された。
 さて、鶴彬が3月に書いた「失はれたる寫實主義の揚棄」にもふれられている。「もっと深く燃えるプロレタリアートの想華[ママ]」があってこそのプロ川柳、と言われている。

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投稿者:木村哲也2005/1/17 7:54
◇三つの時期

 全句集の区分。
 釈放後が三期めなのは当然(?)として、大正と昭和で区切るのは変更のつもり。
 分量的に大正で半分近いばかりでなく、未発表が多い時期を、初期篇としたい。
 大正15年からを収監以前とする。

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投稿者:木村哲也2005/1/16 19:49
◇有名人を斬るか無名人を持ちあげるか

 人物論の書き方について最後にまとめられているが、鶴彬の場合は本当に前者なのか。
 斬られるほどの有名人、とも思い難い気もするが。

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投稿者:木村哲也2005/1/15 13:01
◇伝記はどうでもいい

 暗殺されていようと、そうでなくても。
 鶴彬の「作品」だけを虚心に読みたい。

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投稿者:木村哲也2005/1/14 16:40
◇おもしろいエピソードだが

 あくびから追分の出る終い風呂

 川柳とは何か、と言われた鶴彬が、答えて作った句だという。学校で川柳を教わってもわからないはず、ともいう。

 嫁の屁は五臓六腑を駆けめぐり
 嫁の屁はきびすでこれをもみ殺し

 もちろん(?)、全集には出てこない句だ。
 おもしろくはもちろんあるが、川柳の説明だとしても、鶴彬が、ひねってくるとも思いにくいように、個人的には思うが。

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投稿者:木村哲也2005/1/13 18:49
◇マルキストでもプロレタリアでもない

 と、櫻井靖子は、『オール川柳』所収の文章で、センセーショナルに述べている。
 だが、流布している伝記(坂本幸四郎のなど)に問題があっても、しょせん、伝記的事実は「確証」に乏しいものがあると言いたい。
 また、鶴彬も小林多喜二も宮本百合子も、貧しくはなかったからプロレタリアートでない、というのが正しいかは、しばらく考えたい。
 51句が引かれていたが、新版全集刊行前に旧版全集の誤記を直しているのは評価したい。

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投稿者:木村哲也2005/1/13 18:33
◇その他の新資料情報

 『鶴彬句集』岡田一と。
 『石川近代川柳史』。
 『近代川柳』。
 雑誌『オール川柳』から

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投稿者:木村哲也2005/1/13 18:31
◇『評伝 反戦川柳人・鶴彬』

 一叩人が、鶴彬研究会から刊行。1983年。
 季刊で、「鶴彬研究」という瓦版ふうのものが刊行されていたことも知れる。
 文庫サイズ。
 たいまつ社版との異同は、まだ不明。

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投稿者:木村哲也2005/1/12 20:07
◇「伝説のプロレタリア文学者鶴彬」

 オール川柳96年8月号の記事入手。
 伝説の鶴彬像への挑戦ふうの記事が30ページ。
 伝記は関心が個人的には薄く、また、どの道、確定できない。
 しばらく、この記事を読む。

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投稿者:木村哲也2005/1/11 20:42
◇澤地久枝は

 結局、無用の註は落とし、ダブりをなくし、初出に移し、としているのは評価できる。
 だが、『評伝』の註は考慮外だった。

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投稿者:木村哲也2005/1/10 10:28
◇新版全集での註

バット (十五)
トッカピンニズム
夜刈(*)(三)
坑(しき)(四)
三月
プロ吉やアヂ太
モップル (五)
亀戸 (九)
年貢
鼠泣き
あぶれ
十月 (十)
スカップ
ヅケ (十一)
半定歩
ヨボ
トロ
ワリビキ (十二)

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投稿者:木村哲也2005/1/10 10:12
◇初出以外につけた註

 「アゴヒモ」は、昭和10年の上の句でなく、昭和5年2月の下の句にあり。

 アゴヒモをかけ増給を言へぬなり
 アゴヒモをピケに頼んで「労民党」(新労農党)

 ただし、後者では「警察官」を指さないなら、これでよいわけだが。
 
 また、「シキ」は、「坑」を「しき」と読ませるなら、昭和12年より前でも、4年や10年にあり。
 そして、前にふれた「ダラ幹」が最後なのは、皮肉。

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投稿者:二健@tengu2005/1/10 4:21
◇ちょっと一服

儲け話があります。「オリックスマネー川柳」に応募すると1句で10万円ゲットできる可能性が十分あります。1回に3句まで無料で応募できます。締め切りは2005年1月31日(月)で、2月下旬入選発表予定。選考はオリックス40周年マネー川柳実行委員会です。私は3句応募しました。入選したら奢り合いましょう。詳細はURLクリック。ご健闘を祈ります。
http://40th.orix.co.jp/senryu/index.html

http://40th.orix.co.jp/

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投稿者:木村哲也2005/1/9 21:54
◇評伝で落ちた註

立ン坊 (四、1)
モップル (五、8)
あぶれ (九、2)
シャッポ (九、6)
シケ (九、6)
二八の春 (九、6)

 いつもながら意図不明。

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投稿者:木村哲也2005/1/9 21:43
◇『評伝』での註

バット (十五)
雪女郎
都腰巻
三界
カフェ
トッカピンニズム
てふ
干鰯
宇宙論
マルクス
無常
矢壺
解脱 (二)
ペシミスト
(カフェー)
立禁(三)
軍神の像
坑(しき) (四)
プロ吉やアジ太
マクドナルド
待合
深川 (五)
特高
亀戸 (九)
年貢
鼠泣き
玉の井
浚てふ
小名木川
二等車
魔窟 (十)
大福帳
アゴヒモ
スカップ
年期
身代金
ペンチ[ベンチ] (十一)
阿魔
ヅケ
新居格
内地人
半定歩
トロ
ヨボ
鮮人
シキ (十二)
エノケン
ワリビキ
花魁
メーデーのない
総検
ダラ幹

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投稿者:木村哲也2005/1/9 21:05
◇一叩人の註

 まずは旧版全集から。川柳自体にのみのとし、詩などのは除く。

都腰巻 (大十五、5)
トッカピンニズム (大十五、8)
立ン坊 (四、1)
バット (四、3)
プロ吉やアジ太 (四、7)
マクドナルド (四、9)
モップル (五、8)
亀戸 (九、2)
年貢 (九、2)
鼠泣き (九、2)
あぶれ (九、2)
シャッポ (九、6)
シケ (九、6)
亀戸 (九、6)
二八の春 (九、6)
玉の井 (九、6)
浚てう船 (九、8)
小名木川 (九、8)
シキ (九、9)
スカップ (十、6)
玉の井 (十、11)
スカップ (十一、5)
ヅケ (十一、5)
半定歩 (十一、12)
ヨボ (十一、12)
トロ (十一、12)
シキ (十二、2)
エノケン (十二、5)
ワリビキ (十二、5)
花魁 (十二、5)

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投稿者:木村哲也2005/1/9 20:12
◇ダラ幹

 以下の句にあり。

 捷(か)つことを恐れ裏切らせるダラ幹 (四、1)
 搾取した金を貰ふてゐるダラ幹 (四、4)
 ダラ幹が争議を売れば騰がる株 (四、7)
 ダラ幹になってスパイに敬まわれ (四、10)
 総検[総検挙]にダラ幹だけがのこされる (#十二、6)
 ダラ幹が争議を売ればあがる株 (十二、6)

 12年6月に至り、「ダラ幹」の説明を一叩人はしているが、4年のうちに、もちろん初出でやってほしかった。註の価値が半減する。

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投稿者:木村哲也2005/1/9 17:22
◇大正で約45%!

 校訂全句集打ち込み中。
 上記のとおり。

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投稿者:木村哲也2005/1/8 3:21
◇気まぐれ(?)一叩人

 大正15年の北国新聞投稿作品の一部は、旧版全集の参考資料編に載っている。
 そのうち以下の作品(あえてそのまま)は、※をつけて『氷原』(しかも「永原」と誤植)にも掲載とある。

 フイルムが尽れば白き幕に成
 枯枝に昼の月が死んでる風景 (以上2月14日)
 寒竹の春には枯木ばかりなる
 猫の眼は遂に闇をば知ず果つ
 ふれもせで別れし恋を忍ぶ春 (以上3月2日)
 バットの煙と幻想の魚およぐ (3月15日)
 棒杭と水さようなら左様なら (3月17日)
 菩提樹の蔭に釈尊糞たるる
 宿命の軌道に汽車は煙り吐き
 何物の二に割り出せし雄と雌
 ニッケルの主観ゆがんだ風景 (以上4月20日)

 しかし、3月2、15日分では、3月5日の『氷原』の、以下の句が見落としか。

 仏像を木にして噛る鼠なり
 便所から出て来た孔雀のよな女
バットのけむりに幻想の魚が泳ぐ

 4月20日分では、5月5日の『氷原』の、以下の句を見落としている。

 掌にまり[圏点2文字]の空虚に握りしめ 

 別にやらなくていいサービスは、中途半端にやるものではあるまい。

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投稿者:木村哲也2005/1/7 18:02
◇『あおぞら』

 ↑の鶴彬顕彰全国誌上川柳大会入選句集を入手。
 あかつき川柳会。2004年9月刊。創設3年と。
 本ブログでも名前を挙げた、佐藤岳俊ら、選者は5人。
 ここではあえて、大賞や準賞よりも、「鶴彬」が出てくる句を掲げる。

 鶴彬ごめん戦火がまだ消えず 表洋子
 鶴彬 鋼の意志は今も生き 井伊東吉
 鶴二世 反核平和ペン磨く 北岡文三郎
 鶴彬 切歯扼腕する派兵 田中文時
 この国に今こそ欲しい鶴彬 吉川卓
 鶴二世五百四十六人誕生す 塩満敏
 鶴彬と向き合う日本人として 和泉あかり
 自称鵼 鶴の丸太句懐に 石黒徹
 鶴彬あなたを生涯称えます 玉置英子
 つるあきら思想を胸に生き抜かん 中西すゝむ
 清純な鶴の太刀筋活きている ばもととしお
 多喜二ほど知られて欲しい鶴彬 北野哲男
  
 他に、以下の句が印象に残った。

 手と足や丸太も失せる核時代 井伊東吉

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投稿者:木村哲也2005/1/7 13:33
◇「仏像」の句

 仏像に供米が絶える小作争議 (*三、12)
 仏像の虚栄は人の虚栄なる (*大十四、11)
 仏像の封印切れば犬の骨 (*三、4北陸。三、4氷原)
 仏像はあはれ虚栄を強いられて (大十五、2)
 仏像を木切と思って食った鼠 (*大十五、3)
 仏像を木にして嚙る鼠なり (大十五、3)
 仏像を爪(つま)んでみると軽かった (*大十四、4)
 工場のひびきに仏像ゆらぐ (三、3)
 工賃へらされた金箔で/仏像のおめかし (#九、9)
 工賃/へらされた金箔で/仏像のおめかし (九、9補)

 最後の2句はいずれかでいいわけだが、4句めも、5句めがあればそれでいいのではないか。
 一叩人は、評伝に両方収録しているが。

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投稿者:木村哲也2005/1/7 11:32
◇やっぱりなぞの一叩人

 フイルムの尽くれば白き幕となり
 セコンドの刻み数ふる声ありき
 枯枝に昼の月が死んでる風景

 大正15年2月〜3月を打ち込み中。
 一叩人による評伝のほうも併せて目を通している。
 最初の句は、2月には以下の形だった。

 フイルムが尽れば白き幕と成

 これを採らないのはわかるが、5月の「決定稿」のほうを2月の位置に載せるのが、はたして妥当か。
 それから、3月2日の二つめの句は、3月5日には以下の形だった。

 セコンドの刻みを数ふ声ありき

 こちらを採らないのは、やや不可解。
 で、三つめの句は、3月にも同一で発表されている。ならばこそ、2月の位置を決定稿としたい。しかし3月の位置に載っている。
 わからない。

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投稿者:木村哲也2005/1/6 6:14
◇旧版全集未収録句

 校訂しつつ、全句集を打ち込みながら感じたこと。
 旧版全集で収録開始の大正14年5月5日より前で200句はあり、「総数」の7分の1はあるようだ。
 また、大正時代は未収録が多いのと、旧版全集収録の句は推敲による重複が多く、それぞれで分母が一つずつ減る印象だ。
 語られてきた鶴彬像が根本的に変わるわけでもないが、見過ごせない部分、とは言えるだろう。

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投稿者:木村哲也2005/1/5 12:38
◇「雀」「孔雀」の句

 裸木に雀ふくれ細く鳴き (*大十三、12)
 哲学の本読む窓の雀の恋 (*二、7)

 便所から出て来た孔雀のよな女 (大十五、3)
 孔雀!けんらんと尾をひろげれば生殖器 (#十一、8)
 王様のやうに働かぬ孔雀で美しい (十一、8)
 遊び飽き食ひ飽きさかり[圏点]飽く孔雀 (十一、8)
 蟻の卵のうまさを孔雀盗りおぼえ (十一、8)
 踏み殺し切れぬ蟻に孔雀は気が狂ひ (十一、8)
 生き残る蟻の凱歌に孔雀の死 (十一、8)

 最後6句は、「孔雀」題で一括。最後から2番めは以下の句であった。

 着飾った羽毛のあひへもぐる蟻

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投稿者:木村哲也2005/1/5 9:39
◇「鶏」「鳥」の句

 案外ある。初期と晩年。

争ひを夫(それ)と思はぬ鶏を見る (*大十三、11)
鶏よ猫よ痛ましい事実なり (*大十三、12)
鶏を飼(か)ひ恩給に日を送り (*大十四、1)
若夫婦飼ふ鶏の一夫多妻 (*大十五、7)

小春日を鳥が肥(こえ)をつついている (*大十三、12)
鳥が枝に止まるが如き人の命 (*大十三、11)
籠の鳥歌って女工帰るなり (*大十三、11)
人が居ないと籠の鳥は唄ふ (*大十四、4)
止(とま)り木をシカと掴んで鳴く小鳥 (*大十四、4)
ちょこちょこと大地を歩く鳥を見よ (*大十四、6)
ひょこひょこと大地を歩るく鳥を見よ (#大十四、7)
鳥籠の空間と蒼空の奥の奥 (大十五、2)
本投げ出す/網窓の外の/鳥影 (九、2)
金の卵を産む鳥で可愛がられる (十二、4)
奴隷となる子鳥を残すはかない交尾である (十二、4)

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投稿者:木村哲也2005/1/5 0:28
◇高得点句

 一叩人のダイジェスト、プロレタリア川柳集、京都犬学、小沢信男のEDI叢書、以上にすべて挙がっている句を掲げる。

ふるさとは病ひと一しょに帰るとこ (昭和10年)
奪はれた田をとりかへしに来て射殺され (同)
銃剣で奪った美田の移民村 (同)
空家がありあまるといふのにベンチベンチの野宿 (昭和11年)
もう売るものがなく組合旗だけ残り (同)
待合で徹夜会議で眠るなり (同)

 12年はダイジェストがないが、他の3冊に挙がっているうちから、特に以下の、最後の3句を挙げるべきだろう。

万歳とあげて行った手を大陸へおいて来た
手と足をもいだ丸太にしてかへし
胎内の動き知るころ骨がつき

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投稿者:木村哲也2005/1/4 20:49
◇しゃもの国綺譚

 トリ年なのでと、マスターから注文。昭和12年。
 しかし、一叩人の校訂をしながら。

昂奮剤射された羽叩(はばた)きでしゃもは決闘におくられる
一叩人は「射たれた」としたうえに、「う」とルビを振っている。これはひどい。
 「羽叩き」にも「はばた」とルビがあるが、これも無用。
稼ぎ手のをんどりを死なしてならぬめんどりの守り札
 一叩人は「おんどり」としている。
賭けられた銀貨を知らぬしゃもの眼に格闘の相手ばかり
決闘の血しぶきにまみれ賭けふやされた銀貨うづ高い
遂にねをあげて斃れるしゃもにつづく妻どり子どりのくらし
 一叩人は「斃れる」に「たお」とルビを勝手につけている。まあ親切かもしれないが。
勝鬨あげるしゃもののど笛へすかさず新手の蹴(け)爪飛ぶ
 一叩人は「勝鬨」に「かちどき」と勝手にルビをつけているが、これは無用。
最後の一羽がたほれて平和にかへる決闘場
しゃもの国万才とたほれた屍を蠅がむしっている
をんどりみんな骨壺となり無精卵ばかり生むめんどり
 一叩人は前同様「おんどり」としている。
をんどりのいない街へ貞操捨て売りに出てあぶれる
 ここも同じ。
骨壺と売れない貞操を抱え淫売どりの狂ふうた
 一叩人はなぜか「抱へ」「狂う」としている。

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投稿者:木村哲也2005/1/4 17:39
◇一叩人によるダイジェスト(昭和11年)

@空家がありあまるといふのにペンチペンチの野宿
 本文とダイジェストでは、一叩人はなぜか「ペンチペンチ」。解説文では当然、「ベンチベンチ」だが。
 また、本文からずっと、「いふ」でなく勝手に「いう」としている。
Aもう売るものがなく組合旗だけ残り
B恋すればクビになる掟で搾りつくされる若さ
 一叩人は「おきて」とルビを勝手につけているが、これは自明で不要。意図不明。
C仲間を殺す弾丸をこさへる徹夜、徹夜
 ここも一叩人は「たま」と勝手にルビをつけているが、そう断言できるのか。
D泥棒を選べと推せん状が来る
E神代から連綿として飢ゑてゐる
F働かぬ獣どもさかり[圏点]に来て銀座の夜ひらく
Gこんなでっかいダイヤ掘ってアフリカの仲間達
H待合で徹夜会議で眠るなり
Iヨボと辱しめられて怒りこみ上げる朝鮮語となる

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投稿者:木村哲也2005/1/3 5:31
◇一叩人によるダイジェスト(昭和10年の続き)

H奪はれた田をとりかへしに来て射殺され
 一叩人は「奪われた」としている。
I銃剣で奪(と)った美田の移民村
J地主になるのぞみ果ての骨となり
K次ぎ次ぎ標的になる移民の募集札
L花嫁の写真を抱いて移民の死

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投稿者:木村哲也2005/1/2 3:37
◇一叩人によるダイジェスト(昭和10年)

@首を縊るさへ/地主の/持山である
 原句は三行書き。一叩人は小生の「/」でなく一字開けで対応しているが、もともと一字開けの句も
あるから、適切な処置とは思えない。
 また、「縊」に勝手に「つ」とルビをつけているが、異議あり。「くく」だろう、これは、いくら何
でも。
A鼠泣きおぼえて/ありつく/飯よ、白い飯!
 原句が三行書きなのの処理の問題は、@と同じ。感嘆符を一叩人は削除。
B一粒もとれぬに年貢五割引!
 2月には「穫れぬ」と漢字で、しかも「と」とルビがついていたのを、一叩人は勝手に落とした。
 また「年貢の」の形で、感嘆符はなかった。
 本文では何と、「穫れぬのに」としている。これはまずい。
 ここでは、3月の、「穫」をかなにし、感嘆符をつけた形を採った。
 次句の存在を知っていれば、この形を採るかは別にして、知っていたはずである。
Cひえ弁当の中に地主の餓鬼の白いめし
D売物になる娘のきれいさを羨(うら)やまれ
 一叩人はルビを落としていたが、意図不明。
 逆に本文では、「娘」に「こ」と、ルビが勝手についている。まあそうか、と思いつつ、なぜ解説で
はつけなかったのか。
Eふるさとは飢饉年期がまたかさみ
 3月には「ふるさとの」であったが、11月の形を採った。
 本文では11月の形を採り、解説では3月の形で収録とは、ややあきれる。
Fふるさとは病ひと一しょに帰るとこ
 本文ではなぜか2度出し、2度めにだけ「病ひ」に「やま」のルビがあるが、解説にあるルビなしが
最初の発表形。このルビは、なくてもわかるし、ない形で採った。
G冬越しが出来ぬ吐息にくもる鎌

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投稿者:木村哲也2005/1/1 11:53
◇一叩人によるダイジェスト(昭和4年)

@つるはしが掘らせて奪うやつに向き
Aどてっ腹割れば俺いらのものばかり
 一叩人は、「俺いら」を「俺ら」として「おい」とルビをつけたが、こういうことを勝手にやるものではない。
B十五日経ったら死ねと言ふ手当
 本文では「言ふ」としていたのに、解説では「言う」だった。
C血を咯(は)いて坑(しき)をあがれば首を馘(き)り
D絞め殺すたびに仲間の手がくまれ
Eみんな馘(くび)切れば機械のサボタアジュ
F今にとりかへすビルディングに追はれ
G俺達のこしらへた物ばかり
H虐使した挙句に病めば首を馘(き)り
 一叩人は「病めば」にルビを勝手につけているが、全く意図不明。
Iたこのある手と手が握る闇の中
J飢えさせておいて盗みの陥し穴
K三月のうらみに涸れた乳をのみ
 一叩人は「涸れた」にルビを勝手につけているが、意図不明。
 また、昭和10年3月の「三・一五の恨に涸れた乳を呑み」まで、いろいろに変わっていくことは指摘しておく。
L搾取した金を貰ふてゐるダラ幹
M待合で大衆を売る奴は無事
N大衆の手が打ち鳴らす暁の鐘
 一叩人は「暁」に「あけ」とルビを勝手につけているが、興ざめだ。五七五を踏まえ、少し知識があれば読めよう。
O団結の果てに俺いらの春の花
 別に一叩人の「誤記」はないが、だからこそAでの処理が場当たり的で、鶴彬に失礼。
Pダラ幹が争議を売ればあがる株
 一叩人は「騰がる」と4年版の表記で説明するのは当然だが、12年6月には「あがる」で再発表されているのを、ここであえて指摘しておく。
Qマクドナルドになっても失業が増へる
 一叩人は「増へる」にルビを勝手につけているが、興ざめだ。

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投稿者:二健@tengu2005/1/1 1:40
◇迎春 2005年元旦

キムテツさんのつるべん独走を、沿道から応援してます。バチバチパチ。

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posted by Jiken at 15:57| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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